はぴねす2006年5月



キリストを必要としている
牧師 藤波勝正
 私は28年間に十数回も台湾に行っていますが、4月にも教団の代表として訪問しました。多くの人々が訪ねる地域とは違い、原住民と呼ばれる人々の教会を主にお訪ねします。
 台湾の人口は約2300万人ですが、そのうち42万人が原住民と呼ばれる人々です。13のマレー・ポリネシア系の民族からなり、戦前は高砂族、戦後の一時期は山地人と呼ばれました。漢民族とはまったく異なった習慣、文化、伝統を持っています。
 日本が台湾を統治する前は、山岳地帯の奥深くに住み、古い因習の中で独特の文化を形成していましたが、たいへん貧しい生活でした。最も悲しい過去は、当時は首狩の習慣があったことです。日本が統治しているときに、その習慣やその他の因習から解放しようとしたのですが、完全な成功には至りませんでした。日本が戦争に負けた後、日本語の教育を受けた漢民族の教会が日本語の教育を受けた原住民に伝道した結果、主の恵みのゆえに、多くの部族がイエスを救い主と信じる群れとなったのです。
 漢民族が山地族に対して盛んに伝道している当時、世界の多くの教会が援助活動を活発に行ないました。そのような援助を台湾側で受け入れる中心人物の一人が、山地人の若い牧師でしたが、彼とは28年もの長い間、親しい交わりを持ち続けている親友です。
 外国の教会の代表者が援助活動の調査のために台湾を訪れ、「今、山地人は何を必要としているのか」と尋ねたとき、彼は「キリストを必要としている」と答えたそうです。貧しく、さまざまな問題を抱えているため山地人にとって必要な物質が多々あることを彼は知っていました。しかし、その民族を精神的にも物質的にも真に豊かな民とするのがキリスト以外にないことをも知っていたのです。
 今では、山地の多くの民族をイエスを救い主として受け入れ、その70パーセントがキリスト者となりました。どこの部落に行っても中心に教会があり、多くの人々が教会中心の生活をしています。彼らがこの100年間に経験した社会的、経済的、文化的変化は、だれも経験したことがないほど急激なものでしたが、その変化をもたらしたものの一つはイエスへの信仰であり、その変化の中で彼らを守ったのも、キリストを信じる人々からなる教会だったのです。
 私はこの民族の歩みに関心を尊敬を覚えつつ、28年の間に幾度もお訪ねし、多くの方々からさまざまなことを教えられてきました。今回お訪ねしたときには、久しぶりに原住民の家に宿泊させていただき、親しい交わりを持つことができました。ある朝、町並みを見ながら散策しつつ、原住民の歴史を思い返していたとき、もし彼らのうちにイエスへの信仰がなかったなら、今ごろはどんな状況の中にいなければならなかったのかを想像し、主の恵みの大きさを覚えました。
 イエスは、個人の生涯を悪から守り、祝福に満ちた道に導くだけではなく、民族、集団、家族を救い、守り、支えてくださるのです。キリストを必要としているのは、台湾の原住民だけではありません。すべての人がキリストを必要とし、そして、キリストはすべての人を必要としておられるのです。


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