はぴねす2009年5月



神によって強い者に
牧師 藤波勝正

5月31日の日曜日はペンテコステと言い、イスラエルで教会が生まれた日です。この時、最初の教会設立のために用いられたのは、弱い人たちでした。聖書には理想論が記されていて、自分たちには到底そのような歩みをすることはできないと言われることがよくありますが、聖書は現実に起きたことの記述であり、失敗したり挫折したり大きな罪を犯したりした人に対するメッセージです。ですから、聖書は私たちの真の姿を語っているのです。それだから長い年月多くの人々に読まれ、伝えられてきたのです。

世界遺産にも登録さている聖ペテロ大聖堂という建物がローマにありますが、このペテロは、教会が誕生する際に大きな働きをした人の一人です。ペテロ、ピーター、ペーテルなど国によって読み方は違いますが、イエスの最も近くにいた12弟子の一人で、その筆頭でした。

彼は、イエスが行かれるところにはどこにでも行き、イエスの最も近くにいた人の一人でしたが、イエスの生涯の一番大事なところで大失敗してしまいました。それは、イエスが裁判にかけられているときのことでした。彼はイエスを心配して裁判が行なわれているところまで来ました。それはたいへん勇気ある行動でしたが、一人の女性に「この人もイエスと一緒にいました」と証言されると、ペテロは「いいえ、私はあの人を知りません」とイエスと一緒にいたことを否定しました。その後も、同じようなことを言って、イエスを知らないと強硬に主張し続けたのです。3度目にイエスを知らないと言ったとき、あることがきっかけで我に返り、激しく泣いたと記されています。その後、イエスは十字架上で死に、3日目によみがえりましたが、ペテロと個人的に話すときを持ってくださいました。イエスは彼を責めることなく、彼を信頼し、新しく歩む道をお示しになりました。

自分の身に不利なことが起きないとわかっているときには正直に証言することができても、このような危機的状況で正しく証言できるかどうか不安に感じる方が多くいると思います。聖書は、ペテロの記事を記録し、人間の強さだけでなく弱さをも教え、同時に、イエスがすべてを知った上で弱い人間を愛しておられることを教えています。

よみがえったイエスが天に帰って40日後、「聖霊があなたがたの上に臨まれるとき、あなたがたは力を受けます」(使徒1:8)という聖書のことばのとおりに神からの特別な力をいただいたペテロは、大きな試練にも打ち勝つ人間となり、誕生した教会の指導者の一人として、主から与えられた使命を果たしました。最期はローマのネロ皇帝によって殉教の死を遂げたと伝えられています。

このように、聖書は人間の強さだけでなく弱さをも記録し、それに勝つことができるようになるための救いの道を教えています。それは、現実に今も起こることであり、多くの人々は聖書を読み、聖書の中に真理を見いだし、主に祈ることができる者へと変えられているのです。私も、私の教会に属している人々も、それだけでなく、多くのキリスト者たちも、今も試練に勝つ力を主からいただいて、新しい人生を歩む者となっているのです。



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